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3)触知図に関する特性
(皆川洋喜ほか:“盲人の地図および環境の理解に関する実験と考察”、信学論(D-?U)、vol.J79-D-II,No.5,pp.989-991,May,1996)
○盲人の地図や環境の理解に関する心理実験によると、先天性の盲人は、視覚経験がないために、空間的な経験が少なく、地図や環境を空間的に理解することが困難である。

 

○地図の情報を触覚から得る場合、触覚は視覚に比べてその分解能がかなり低いので、細部が分かるように表現するためには地図全体を大きくする必要がある。ところが、地図が大きくなると、手指を前後左右に移動させて順次得られる断片的な情報を頭の中でつなぎあわせながら全体像を理解しなければならない。盲学校の生徒4名(先天盲と後天盲各2名)にレイズライタ(線を引くと凸に浮き上がる特殊な用紙)を使って盲学校周辺の地図を描いてもらったところ、図6のようになった。後天盲の一人は地図を面で表現したが(図6(a))、他の3名は線で表現した。また別の後天盲は、複数の線の地図をレイズライタ上でつなぎあわせて表現することが出来た(図6(c)が、先天盲には困難であった(図6(b))。

 

○盲人がある環境を歩行する場合、視覚を使ってその中の情景を見渡すことが出来ないので、視覚以外の感覚器である聴覚や触覚等から順次得られる断片的な情報を頭の中でつなぎあわせ、環境の全体像を理解する必要がある。図の理解力を調べるために、上記の4名に図7(a)の様な簡単な複合図形を触察し、レイズライタを使って図に描いてもらう実験では、図7(b),(c)のようになった。後天盲は触察後すぐに「円が二つ重なっている」と、図7(b)のような図を描いた。先天盲は「円がある」とは答えるが、それがどのような状態にあるのかを答えることは困難であった(図7(c))。

 

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